「銀行が出してきた条件に納得がいかない!」
「金融機関から借りられそうにないが、他に資金調達の方法はないの?」
と思っている方。また、
「社債ってよく聞くけど、何のことかよく分からない」
と思っている方。
よく聞くから何となく知っているようで、実はぼんやりとした理解に留まっている方、少なくないのではないでしょうか。
ここでは、何となく知っているようであまり知らない社債の基本的な仕組みと概要、メリットについてご説明します。
社債のしくみや種類
社債とは、企業が投資家らに向けて債券を発行し、資金調達をする手段の一つです。
社債には、様々な種類があり、
- 普通社債
- 劣後債
- 永久債
- 新株予約権付社債
- 転換社債
- 電力債
など、様々な種類があります。
ポピュラーなのは、ストレートボンドと呼ばれる最も一般的な「普通社債」、償還期間、満期がなく企業が存続する限り永久的に利子を払い続ける「永久債」、そして一定の条件のもと株式への変更が可能な「転換債」、この3つでしょうか。
社債発行のメリット・デメリット
社債は、社債である限り、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資、つまり、株式の発行により資金調達をする場合とは異なり、経営に干渉されるリスクがありません。
これは大きなメリットであると言えるでしょう。
「社債である限り」というのは、仮に転換債の場合、転換債が株式に転換されると、経営に干渉されるリスクがあるということです。
一方、社債は、いわば借金です。
借金なので、当然返済しなければなりません。
よって、社債を発行し過ぎると、借入金が増えるのと同じように、会社の信用問題に影響します。
また発行するにも、細かなことが色々と決められており、手間と時間がかかります。
【参考】起業家なら知っておくべきベンチャーキャピタルのタイプ5つ
【参考】エンジェル投資家とは?彼らの出資の目的と認識すべきリスク
社債の募集と発行条件
社債の募集方法、いわば、お金の出し手を見つける方法としては、以下の2つがあります。
- 不特定多数の投資家を対象とした「公募債」
- 比較的少人数で限定した投資家を対象とした「私募債」
公募と私募の違い
公募する方が、より多くの投資家にアプローチをすることができるため、多くの金額を集めることができます。
しかし、公募には、様々なルールが設けられていて、費用もかかるため、一筋縄にはいきません。
公募する場合は、証券会社に依頼をして、手続きをサポートしてもらうことになります。
よって、一般的に中小企業が社債を発行する際には比較的利用しやすい、そして資金を集めやすい「私募債」で募集をかけます。
私募なので、実質的には、知人や、コネ経由で資金を集めることになります。
しかし、私募債の発行とはいえ、ルールがないわけではありません。
会社法で、細かく定められていますが、特に、以下の3つの条件をクリアしないと募集をすることすらできません。
- 社債購入者(投資家)の募集定員を50名未満にする
- 適格機関投資家(有価証券投資に関する専門的な知識やキャリアを有する投資のプロ)が含まれていない
- 社債総額を最低券面額で割った数が50未満である
「社債」と金融機関からの「融資」の違い
しかし、「社債」はなぜ存在するのでしょうか。
「銀行から借りればよくない?」と思う方も少なくないかと思います。
銀行融資との違いについてもみてみましょう。
社債は「直接」金融、融資は「間接」金融
企業が資金調達をする方法は、直接金融と間接金融の2種類に分けられます。
直接金融とは、事業主が投資家、支援者を募り、資金の出し手から直接資金集めをすることで、株式、社債など有価証券が該当します。
一方で、銀行や信用金庫から融資を募り資金を集めるのは間接金融と呼ばれます。
金融機関は口座を保有している者に対して預け入れをしてもらい、その預金から個人や法人に融資を行なっています。
資金の出し手と、借り手の間、つまり、銀行や信用機関が両者の間に入るため、間接金融と言われるのです。
担保や保証人、審査の有無
融資を受けるためには、融資額に見合った担保や保証人の確保が必要とされることが少なくありません。
そしてもちろん、借り入れを行うためには審査もあります。
一方、社債を発行する場合、基本的に担保や保証人は不要で、金融機関が行うような審査もありません。
投資家に審査を求められることはありますが、金融機関の審査に比べると、若干緩いケースが多いようです。
しかし、会社の信用状態、財務状況や、事業計画についての開示は求められることが少なくないでしょう。
償還期間や金利、借入額決定の柔軟性
融資の場合、償還期間や金利、借入額は担保、保証人、自己資金、その他信用情報に基づき金融機関側の裁量で決定します。
その結果、十分な資金が得られない、月々の経済的負担が大きくなることがあります。
しかし、社債を発行し資金調達する場合には償還期間、利率、借入額は企業側の裁量で柔軟に決められます。
また、社債は満期の一括返済が原則であることから、毎月の負担は金利のみです。
社債の場合は、企業側から条件を出して、それに乗ってくれる投資家を集めることになります。
よって、自由だからといってあまりに無謀な条件にすると、誰もお金を出してくれないということになりかねません。
会社の状態を見極めて、投資家がお金を出してくれるような条件を整える必要があります。
社債を発行するまでの流れ(私募の場合)
それでは、資金調達の手段として実際に社債を発行するまでの具体的な流れについて見ていきましょう。
ステップ1:条件の確認、目的の明確化
まず社債発行の目的の明確化、そして発行に必要な条件を満たしているのか確認します。
社債で集めた資金の使途の制限は基本的にありませんが、どれくらいの資金が何のために必要となるのか、明確にしましょう。
ぼんやりとした目的でお金を調達すると、あっという間に資金はなくなってしまうものです。
そして、冒頭で述べた主に3つの条件をしっかり満たしているかチェックが必要です。
ステップ2:償還期間や返済計画、借入額など募集要項の作成
次に具体的な償還期間や利率、借入額を含め、債権者を募るための募集要項を作成します。
万が一、企業が倒産した場合でも返済義務は継続するため、返済計画や積み立てプランについても綿密に決めていきます。
ステップ3:取締役会の開催、承認
募集要項の作成ができたら社内で取締役会を開催します。
取締役会において、借入額や償還期間などが妥当なものか判断してもらい、正式な承認を受けます。
その際に、資金使途が明確でない場合には承認してもらえない場合もあるため、決議が得られるよう入念な準備をしていきましょう。
ステップ4:募集の受付、発行
取締役会から承認が出れば募集受付を開始し、晴れて社債発行となります。
まとめ
社債を発行するのは、もちろん会社が単独ですることもできますが、それなりにまとまった額を調達しようとする場合、証券会社にサポートしてもらうのが一般的でしょう。
銀行からの融資に比べ資金調達における柔軟性があるのが社債の特徴であり、メリットです。
しかし、社債発行ならではのデメリットやリスクもあります。
しっかり考慮した上で入念なプランや体制づくりを行い、不明瞭な点がある場合には専門家に相談した上で発行手続きを進めていきましょう。