ストレスチェックは義務?企業が最低限知っておくべき知識
- 2022/6/22
- 就転職・人事
最近よく話題になる労働者のストレスやメンタルヘルスの不調。
これは最早個人で対処できる問題ではなく、企業が対処すべき問題の一つとなっています。
ストレスが積み重なり、メンタルヘルスに不調を来すと、過労死や、自殺に原因になることもあります。
そういうことがあると、企業にとっても大きなダメージになります。
もちろん、社会にとっても大きな損失。
そのような事態は、社会を挙げてでも、一つ一つ芽を潰していかねばなりません。
そこで、今回は、2015年から企業に実施が義務付けられたストレスチェックの基礎知識について解説します。
【参考】労働組合とは?加入の前に知るべきメリット3つと注意点3つ
ストレスチェックは義務
ストレスチェックとは、対象者のストレスがどのような状況にあるのか、またその度合いについて検査することを意味します。
労働安全衛生法の改正に伴い、2015年12月から、労働者が50人以上いる事業所においては、雇用形態に関わらずその実施が義務付けられました。
義務化された背景や未実施の際の罰則について
なぜ、義務化されるに至ったのでしょうか。
その背景には、
- 職場での長時間労働や人間関係、ハラスメントによって精神を病んでしまう
- 過労死に追い込まれてしまう
そのような労働者が年々増加傾向にあったことから、メンタルヘルス対策の必要性が社会全体で問われ始めたことが大きく影響しています。
実施しなかったり、実施状況を労働基準監督署に報告をしていないと、罰則があります。
場合によっては、50万円以下の罰則金の支払いが命じられることも。
また、未実施は労働契約法第5条にある安全配慮義務の違反にもなります。
そういうわけで、該当する事業所は、実施を徹底する必要があるのです。
【参考】長時間労働になるのはどこから?発生する原因と回避策を解説
ストレスチェックの手順や概要
ストレスチェックは義務なので、必ず実施しなければなりません。
実施は、以下の手順、概要に沿って進められます。
手順
- 実施方法や社内ルールの策定
- 質問表の準備、配布
- 実施
- 評価、医師の面談指導の要否の判定
- 本人に通知
※ストレスが高い人は、以下の流れに沿うこともあります。
- 本人からの面談指導の申出
- 医師による面談指導の実施
- 就業上の措置の要否、内容について医師から聴取
- 措置の実施
ストレスチェックとは、何をするのか
ストレスチェックでは、対象者に様々な質問をして、その回答を評価していきます。
質問項目や評価基準は、各事業所で独自のものを設定することも可能。
厚生労働省の公式サイトから、質問例が載っているチェックシートをダウンロードして検査に用いることもできます。
尚、独自のものを設定するにしても、必ず含めなければならない質問項目があります。
具体的には、
- 具体的にどのような心理的負担、自覚症状があるか
- 心理的負担や自覚症状の原因は何か
- ストレスを抱えている労働者に対し、現状でどのような支援がされているか
これら3つの要素は必ず含めることになります。
以下は、質問項目の例です。
対象者は、該当する箇所に丸をつけて回答する形になります。
A. あなたの仕事、労働状況全般について
- 時間内に仕事が処理できない
- 職場で自分の意見が尊重される、反映される
- かなりの集中力、注意力を要する業務がある
- 職場の人間関係は良好である
- 上司、同僚は友好的である
- 働きがいのある仕事だ
B. 最近1ヶ月のあなたの心理的状態について
- イライラしている
- ひどく疲れている
- 落ち着きがない
- 元気がいっぱいである
- だるい
C. 周囲について
- 気軽に話ができる人はいるか、それは誰か
- 頼りになる人はいるか、それは誰か
- 相談に乗ってくれる人はいるか、それは誰か
ストレスの判定方法
まず、ストレスの判定にあたっては、各項目の回答を点数化しグラフ化します。
その合計点数によってストレスの度合いを判定、通知する形となります。
【参考】メンタルヘルス対策は十分?心の健康を守るためにすべきこと
ストレスチェック実施時の注意点
ストレスチェックを実施する際には、以下3つの内容について気をつける必要があります。
医師や保健師、もしくは厚生省の認可を受けた者のみ実施できる
誤解されていることが多いですが、ストレスチェックは誰でも実施できるわけではありません。
産業医や保健師などの専門家や、厚生省の認可を受けた者のみが実施できるのです。
適当な誰かが適当に独自のチェックシートを用意し、独自のやり方で実行してもダメ。
それを報告したとしても、認められません。
高ストレス者との面談記録は5年間保存が必要
また、ストレス値が高い人を対象とした医師との面談に関する記録は、各事業所で最低5年間は保存しなければなりません。
大丈夫そうだからといって、書類を雑に扱わないようにしなければなりません。
誤って破棄しないように注意しましょう。
検査結果を事業者が労働者から不正に入手することはできない
企業が実施するとはいえ、検査結果は、究極の個人情報。
医師や保健師、認可を受けた者が実施した結果は、個人に直接送付されます。
企業経由で手渡されるとしても、企業側が勝手に中身を見ることはできないのです。
よって、結果の良し悪しにかかわらず、検査結果を事業者が労働者から不正に入手しようとしたり、許可なく結果内容を開示することはNG。
そのため、事業所は個別の結果ではなく、就業上の措置の有無、必要性とその内容についてのみ、実施者である医師から意見聴取することになります。
そして、それを踏まえて、勤務時間の短縮など必要な策を講じていきます。
面接指導者、実施者には守秘義務がある
ストレスやメンタルヘルスに関することは、労働者当人にとって非常にデリケートな問題。
第三者が軽い気持ちで干渉して良いものでも決してありません。
面談を実施した医師やそのスタッフには、対象者の情報に関する守秘義務が法律で課されています。
万が一漏洩したり、不当な情報開示を行った際には、刑事罰が課されることもあるのです。
【参考】ハラスメントとは?知っておきたいこんなものまで「●●ハラ」
まとめ
ストレスチェックの実施は、あくまでも過程の一つ。
その結果を元に、職場環境の改善やメンタルヘルス対策を適切に講じることこそが大切なのです。
一方で、従業員にとって非常にデリケートな部分に関わることにもなります。
検査結果の守秘義務などプライバシーへの配慮は徹底した上で、健全に実施するようにしましょう。