日本人ならほとんど全員が触ったことがあるであろう、ハンコ。
名前を書いて、その横にポンと押すその動作を、大半の人が経験しているのではないでしょうか。
今時、100円ショップでも手に入る「ハンコ」ですが、それを取り巻く環境が変わりつつあることをご存知の方も多いかもしれません。
コロナを契機に、世の中的に「脱ハンコ」の動きが進みつつあるのです。
ここでは、大きな動きになりつつある、脱ハンコに向けた施策を社内で推進する上での4つのコツと手法について紹介していきます。
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ハンコ業務継続で起こりうる弊害や問題
従来のあらゆるビジネスシーンにおいて「ハンコ」は必要不可欠なものであり、ハンコをもって承認、契約するのは当たり前でした。
しかし、コロナ禍において、承認印を押すためだけに出社する、リモートワークの業務停滞や妨げの原因になる、といった声が上がるようになり、「そもそもハンコって必要なんだっけ?」という疑問が呈されるようになってきています。
中には、経営者らが率先して脱ハンコ実現を試みている中小企業もありますが、大手企業を見ると、なかなか実現に至っていないようです。
脱ハンコを目指そうとしても、ハンコ文化に固執している上役がいたり、社員の理解や認識が足りなかったりすることが実現できない原因にもなっているようで、それらを解決することが今、多くの企業に求められている経営課題であると言えます。
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社内を「脱ハンコ」に動かすためのコツ4つ
それでは、社内を脱ハンコに動かすためのコツ4つについて見ていきましょう。
①整理・分析して「各論」に持ち込む
脱ハンコのための社内施策を作り、実行する上で、まずは全体的な業務フローを整理・分析する必要があります。
各部署、役職ごとにおける一連の業務で、従来のように紙やハンコが必ず必要なもの、電子化可能なものを洗い出して分類しましょう。
電子化対応が曖昧なものに関しては、他社の実例を参考にするか、もしくは法規定に則って判断していきます。
「総論」で議論をしていると、必要な部分のみを取り上げられた挙句、「いやー、どう考えても無理でしょ」という話に持ち込まれてしまいます。
そうではなく、「少なくともここはハンコいらないよね?」という「各論」に持ち込む方が社内の説得には有用で、脱ハンコに持ち込めるところ、明らかに持ち込むべきところを整理・分析して、徹底的に洗い出します。
②権威ある社外の動きを「印籠」にする
電子化可能or不可能業務の洗い出しができたら、それらをまとめて役員や経営陣など上層部の説得を試みます。
年配の人間はハンコ文化に固執していたり、慣れ親しんでいるケースが多く、全く相手にしてもらえないこともあります。
どれだけ業務を効率できるのか、どんなメリットがあるのか具体的な情報を提示することも大事です。
しかし色々な話を聞いてみると、一番効果があると思われるのは、他社事例や、法務省による開示情報だったりします。
「法務省がこう言ってるんだから」「あの会社もやってるんだから」というのは、強力な説得材料になります。
③スモールスタートで小さな成功体験を演出する
上層部の許可が降りたら、いよいよ脱ハンコ施策の実践です。
しかし、いきなり大々的に展開しようとして失敗すると、必ず足を引っ張ろうとする人が出て来て、頓挫してしまうもの。
なので、スモールスタートで、一部の部署、一部の業務から、まずは試験的に、そして段階的に導入していきます。
スモールスタートで試験的に始め、小さな成功体験を演出できれば、導入に対するモチベーションが向上します。
そうなると、社員をはじめ、乗り気ではなかった上層部の理解も得られやすくなり、一気に導入が進むでしょう。
また、段階的に導入を始めることでデジタルデバイドによる認識のズレや心理的、経済的負担の拡大も最低限に留められます。
④効果があったことを社内に刷り込む
脱ハンコによる業務フローの改善、効率化が見えてきたら、いよいよ社内全体で本格的に導入していきます。
導入にあたり、社員の認識や理解が足りていない、業務の効率が悪くなるなど、問題やトラブルも必ず生じてしまうもの。
出来れば、それらに対応するための担当者も事前に決めておくのが理想的ではあります。
そして導入後、一定期間が過ぎたら、評価、改善をしつつ、効果があったことを社内に向けて発信するのが重要です。
これによって、「他の業務も脱ハンコで改善できるかも」という機運を高めることができます。
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脱ハンコを目指すためのツールや手法
それでは、脱ハンコを実現するためにおすすめのツールや手法について見ていきましょう。
①電子印鑑の利用
脱ハンコには電子印鑑の利用が不可欠となります。
電子印鑑にも様々な種類がありますが、今すぐ始められるのはExcelを使った手法です。
専用のアドインを入れるか、もしくは図式からハンコの形と色(赤)を選び、その中に社名や名前を打ち込んでPDFに変換します。
Excelの電子印鑑は、法律上の効果は持たないものの、社内で使うのであればこれで十分と言う考え方もあります。
また、クラウドサインやクリップスタンプといった既存のサービスも非常に便利です。
クラウドサインは、弁護士ドットコムという上場企業が展開しているサービスで、非常にシンプルで使い勝手の良いサービスです。
②電子署名の利用
また、電子署名の利用も脱ハンコのために必要な施策です。
AdobeソフトやEサインPDFなどの既存のサービスを利用し電子署名を作成して、必要な時にそのファイルを書類に貼り付けます。
電子署名の作成にあたり、デスクトップパソコンの場合にはマウスや専用のペン、パットが必要となります。
③業務のペーパーレス化
書類がなくなれば手動でハンコを押す必要もなくなるため、業務全体をペーパーレス化することも根本的な問題の解決につながります。
書類を作成し逐一プリントアウトするのではなく、タブレット上で書類や資料の共有、管理ができれば電子印鑑や電子署名も浸透しやすくなります。
導入にあたっては当然ある程度のコストや手間を要することになりますが、これからの事業に必要な施策であることは間違いないと言えるでしょう。
まとめ
脱ハンコに向けた社内施策を実践することで、ムダの削減や業務効率化、そしてコンプライアンス強化にもつながります。
いきなりの導入は難しく、また法規定の理解や上層部、取引先との兼ね合いも必要であるため試行錯誤しながらになるとは思いますが、少しずつ準備を進めて、脱ハンコを目指していきましょう。