個人事業主にとって、1年の内で最も面倒なイベントともいえる確定申告。
1年間の所得が一定額以下の場合や事業が赤字の場合、申告の義務はありません。
そのため、「不要ならやらない」を選択をする人の方が多いかもしれません。
しかし、たとえ義務がなくても、申告すべき理由があります。
ここでは、たとえ赤字でも、個人事業主が確定申告すべき理由について解説します。
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確定申告は赤字でもするべき?
個人事業主は、1年間のうちに一定の所得がある場合、確定申告を行なって所得額に対する税金、つまり所得税を納める必要があります。
しかし、事業が赤字の場合、所得税が課されないため、確定申告を行う義務は発生しません。
一方、赤字でもあえて確定申告をすることで、多くのメリットがあります。
義務がないからといって申告せずにいると、デメリットやリスクになることもあります。
事業の収支にかかわらず、個人事業主は毎年忘れずに確定申告を行った方が良いでしょう。
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赤字でも確定申告すべき理由とメリット
事業が赤字の際に行う確定申告のことを、「損失申告」と呼びます。
この損失申告をすることによって、事業者は次のようなメリットを享受できるのです。
源泉徴収分の還付金を受けられる
一つ目のメリットは、源泉徴収分の還付金を受けられることです。
源泉徴収とは、原稿料や講演料、弁護士や税理士などの士業、その他特定の業種の人に対して支払われる報酬額からあらかじめ所得税分を差し引いて会社が代わりに納税することを意味します。
そして、源泉徴収は、基本的に月毎の報酬の支払い時に行われます。
つまり、そのままにしておくと、事業が赤字だった場合、本来納める必要のない税金を納めてしまっている状態になっています。
しかし、確定申告をすれば、既に源泉徴収された分の税金を還付金として受け取ることができるのです。
損失繰越で将来の所得税負担が減る
また、「損失繰越」と呼ばれる仕組みも見逃せません。
これは、将来、事業が黒字化した時の所得税の負担が減らせる仕組み。
これも、確定申告すべき大きなメリットの一つと言えるでしょう。
どういうことかと言うと、その年に生じた赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺することで、黒字部分に課税される所得税や住民税の額を引き下げられます。
例えば、去年が100万円の赤字で、今年が300万円の黒字と仮定します。
そして、確定申告をしなかった場合と、確定申告した場合を比較してみましょう。
前者の場合、総所得の300万円分にかかる税金を納めなければなりません。
しかし、後者の場合、赤字で所得を相殺できるため、総所得が200万円(300万円-100万円)にかかる税金を納めればOKなのです。
ただし、これは青色申告時のみ適用される特典の一つであることには注意が必要です。
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確定申告をしないリスク
それでは、事業が赤字の場合に確定申告をしないリスクについても見ていきましょう。
国民健康保険料の算定の際に不利になる
会社に雇われていない個人事業主は必然的に国民健康保険に加入することになります。
しかし、たとえ所得がマイナスでも、確定申告しないと保険料の算定の際に不利になります。
なぜなら、1年間の総所得が一定の基準以下の場合、保険料の減額措置が適用されますが、確定申告によって所得が判明しないと、その対象外となってしまうためです。
税金の各種証明書の発行ができない
無申告の場合、課税証明書や非課税証明書等、税金に関する各種証明書を発行できません。
非課税証明書は
- 国や自治体の給付金や助成金を利用する場合
- 児童手当や年金を申請する際
等に提出が求められる書類。
それがないと、申請を受け付けてもらえない可能性すらあります。
ローンを組めなくなることも
確定申告が完了すると、税務署の受領印が押された申請書の控えが発行されます。
そして、それは所得を証明するための書類として使われます。
この書類は、金融機関等で各種ローンを組む際に提出が求められます。
そのため、確定申告をしていないと書類が準備できず、ローンを組めなくなってしまう可能性があるのです。
また、所得を証明できる書類がないと困るのは、銀行のローンだけではありません。
クレジットカードの発行や事業資金調達のための融資も、難しくなる可能性があります。
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確定申告は赤字でもやるべき
事業が赤字で確定申告の義務がないなら、わざわざ面倒なことをしたくないという人もいるでしょう。
しかし、たとえ面倒でも、黒字、赤字にかかわらず確定申告は必ずすべきと言えます。
確実に青色申告を利用しつつ、メリットを十分に享受できるようにしましょう。