企業の求人情報を見ていると、しばしば目にする
「ストックオプション制度あり」という言葉。
どうやら、儲かる制度みたいだけど、何のことやらよく分からない、と思っている方も、少なくないのでは。
ここでは、ストックオプションの概要と、そのメリット・デメリットについて、分かり易く解説しています。
ストックオプションとは?
ストックオプションとは、社員や取締役に対する報酬として、会社の株式を割安で発行する権利を付与する、インセンティブ制度の一種です。
「報酬を払いたいけど、現金が不足している」
「従業員のモチベーションを上げて、成功報酬で払いたい」
という会社には、もってこいの仕組みと言えます。
大手外食チェーンであり世界的企業であるスターバックスやIT大手のAppleを始めとし、キリンホールディングス株式会社など日本の大手企業もストックオプション制度を採用してます。
近年では大手企業だけではなく、株式上場を目指すスタートアップ企業など、ストックオプションを導入する中小企業も増えてきています。
ストックオプションの仕組み
基本的には、株価が安い時に、安い価格で株を変える権利を貰い、将来株価が上昇した際に、安い価格で株式を取得、上昇した価格で売却することで差額を利益として頂く、という仕組みです。
例えば、行使価格100円のストックオプションを1,000株もらったとして、数年後、株価が5,000円になった時に、1,000株を全て行使し、売却すると500万円-10万円=490万円の利益が発生します。
株価が10,000円になっていれば、990万円の利益ということになります。
税金を差し引いたとしてもそれぞれ400万円弱、800万円弱の臨時ボーナスが入ることになり、株価が上がればそれだけ大きな利益を見込めます。
ストックオプション導入のメリット
それでは、ストックオプションを導入する企業側、付与される従業員側、双方のメリットについて見ていきましょう。
まずは、企業側から。
①役員や社員の経営参画意識が向上する
社員や取締役は自社の株主となり、株価の変動が自己報酬額に影響するようになります。
よって、株価に影響する事象への興味が湧き、経営に対する参画意識が向上します。
その結果、社員らは株価、つまり企業価値の向上を目指し、自発的に利益向上のために働くようになります。
②優秀な人材を採用できる
成長する可能性があったとしても、資金力の乏しい企業は、なかなか高い報酬を払うことができません。
そうなると、せっかく事業にポテンシャルがあったとしても、優秀な人材を採用できず、チャンスを逃してしまうと言うことが起こり得ます。
そのような企業にとって、
「今は安い給料で頑張って。でも、将来株価が上がったら、大きく利益が出るから」
という謳い文句で人材を惹きつけられるストックオプション制度は、非常に有難い制度です。
実際、ストックオプションを武器に優秀な人材を獲得しようとするスタートアップ企業も多数存在します。
【参考】手数料なしで採用!?リファラル採用の魅力4つと注意点3つ
③社員の定着率の向上や離職の歯止めにつながる
通常、ストックオプションを付与してから、実際に利益が確定するまで、数年の期間を要します。
また、退職してしまうと、ストックオプションが無効になってしまうという条項も、通常つけられています。
そうなると、従業員は、「利益が確定するまでは、会社に留まろう」と思うものです。
それでは、社員側の目線から見ていきましょう。
④やりがい、会社への貢献を実感できる
ストックオプション導入による、社員にとっての最大のメリットは、やりがいや、会社への貢献を実感しやすくなることです。
単純に言われたことをやるのではなく、成果を意識して業務に励むことで、モチベーションが向上します。
頑張った分だけ株価に影響する → 報酬アップ → 更なる報酬アップを目指しもっと頑張る、という好循環が生まれます。
⑤株式投資のようなリスクがない
副業として株式投資を始めるサラリーマンが増えてきています。
しかし、自己資金を必要とする一般的な株式投資とは異なり、大きなリスクがないことがストックオプションの魅力の一つです。
というのも、ストックオプションとは、そもそも「権利」なので、株価が下落した場合は、その権利を放棄することができるからです。
そうすれば、株式が下落したとしても、損をするリスクはありません。
株価が上昇した場合にのみ、その権利を行使し、株式を取得、売却すれば良いのです。
ストックオプションを導入する際の注意点
ストックオプションは企業側、社員ら双方にとって非常に魅力的な制度です。
しかし、導入にあたって、いくつか念頭に置いておくべき注意点があります。
①業績や経営、経済状況によって機能しないこともある
ストックオプションは、その仕組み上、企業の業績や経営、経済状況が悪化している際には機能しないことがあります。
たとえ社員一人一人が熱心に業務に取り組み、企業側が新事業や商品の開発に力を入れたとしても、必ずしも、それらが株価や企業価値に直的的な影響を及ぼすとは限りません。
他社に負けることもあれば、どうにもならない外部環境で業績が悪化してしまうこともあれば、金融危機で株価が下がってしまうこともあります。
そのような場合にはストックオプションの恩恵を受けることができません。
②報酬が発生しない状況が続くと社内の士気が下がる
業績の低迷や、経済環境の悪化など、ストックオプションが機能しないような状況が続くと、従業員の士気が逆に下がってしまう可能性があります。
更なる報酬アップを原動力として業務に取り組んでいた社員は裏切られたような感覚を持つかもしれません。
そうなると、業務効率の悪化や離職者の増加といった状況にも陥りかねません。
それらを未然に防ぐためにも、ストックオプションを導入するのであれば、機能しなくなる状況もあらかじめ想定し、士気を維持するための代替案の施策づくりも同時に行いましょう。
まとめ
ストックオプション制度を導入することで社員らのモチベーションの向上や経営参画の促進、また社内全体の士気が上がるなど多くのメリットがあります。
また、ストックオプションが機能しない状況を想定した施策づくりや、付与に関して社員同士の格差や不満が生じないように適切な体制づくりを心がけましょう。