企業存続のため、企業は従業員をリストラするという決断を迫られることもあります。
従業員側も、泣く泣くそれを受け入れなければならない状況に陥ることもあるでしょう。
しかし、理不尽なリストラが横行していると言うのも、一方で事実です。
今回は、リストラの種類やリストラを実施するための要件など基礎知識を解説します。
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リストラとは
リストラとは、リストラクチャリング(=再構築、つまり、組織をや人員体制再編すること)の略称で、業績不振やコストカットなど、通常、会社側の都合による人員削減のために行う解雇を意味し、整理解雇とも呼ばれることもあります。
解雇そのものを指す言葉、と思われることもありますが、
- 自発的な退職者を募る
- 自主退職へと追いやる
等、従業員が自主的に退職するよう促すための活動も、リストラとされます。
また、それに加えて、人件費の負担や組織上の歪を修正するために取られる様々な施策も、リストラに含まれることがあります。
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リストラの種類
実際、リストラとされるものにはいくつかの種類があります。
状況に応じて、企業が取るべき対応の内容は異なります。
退職勧奨
いわゆる「肩たたき」と呼ばれるものです。
間接的な表現を用いて、社員の自主的な退職を促します。
これは、一方的に雇用契約の解除を伝える解雇通告とは異なります。
社員の合意があって、はじめて、労働契約が終了する形となります。
- 給与額に見合った仕事や成果を収めていない人
- もしくは社内失業者と呼ばれる、雇われているのにもかかわらず仕事をしない人、
- 仕事がなくなってしまっている人
が主に退職勧奨の対象です。
減給、ボーナスカット
給料の減額やボーナスカットを、退職してもらいたい社員に課します。
しかし、いくらでも減額できるというわけではないので注意が必要。
- 一回あたりの減給額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと
- 減給総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと
が条件となります。
例えば、月10日働いて、10万円をもらっている人がいたとしましょう。
この人は、1日あたり平均1万円を貰っていることになります。
「一回あたりの減給額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと」なので、
5000円以上減給させることはできないことになります。
また、
「減給総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと」
ともあるので、仮に、月に1回給与の支払いを受けていたとしたら、10,000円以上減給させることはできない、ということになります。
一度に大きく下げることはできないので、ジリジリと下げていくことになります。
配置転換
配置転換とは、人事異動の一つ。
同一の組織、企業内で仕事内容やポジション、勤務地を変えることです。
リストラ目的で配置転換される際には、キャリアップを見込みにくい、それほど重要ではない部署、いわゆる「窓ぎわ」に追いやることで自主退職を促します。
降格
降格とは、今いる役職や職位を引き下げることを意味します。
減給を伴うケース、伴わないケースの両方がありますが、多くの場合減給を伴います。
リストラの一環として社員を降格させる場合でも、その根拠を明らかにしなければならないという決まりはありません。
しかし、
- 社会通念上著しくその妥当性を欠いている
- 権利の濫用と認められる
場合には違法になるケースもあるため注意しましょう。
転籍
転籍は、現在、企業と社員の間で結ばれている労働契約を解消させ、同じグループの子会社等と改めて雇用契約を結ばせ、籍を移すことです。
雇用契約を維持したまま業務命令により子会社に赴任させる「出向」とは異なります。
転籍の場合、一度労働契約を解消すると、元の組織に復帰できないのが通常です。
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リストラを行うために必要な4つの要件
経営危機に陥ったから、深刻な事情があるから、といって適切な手続きを経ずにリストラすると、不当解雇、人事権の濫用として社員から訴えられてしまうこともあります。
その結果、裁判で負けるようなことがあると、リストラの目的を達成できないどころか、余計なコストがかかり、更に、組織内がぎくしゃくし、従業員のモチベーション低下を招いてしまうことも有ります。
そのような事態を避けるため、リストラを行うために必要な4つの要件について、一つずつ見ていきましょう。
1、人員調整の必要性
まずは、経営陣や役員等の間で、リストラの必要性について確認しその内容を共有します。
- 赤字が続いている
- このままだと倒産になりかねない
等、リストラに踏み切るための十分な理由があるか、リストラ以外に今の状況を脱却するための方法はないか、等を協議します。
また、リストラの必要性が十分であると判断された場合には、
- どの部署の誰を対象とするのか
- どれくらいの規模(人数)になるのか
についても決める必要があります。
2、解雇回避努力義務の履行
リストラを実施するためには、「リストラ以外、今の状況を打開するための手段が無い」ということが証明されなければなりません。
そのためには、
- 残業の削減
- 新規採用の中止
- 希望退職者の募集
等、経営改善のために出来る限りの努力を全て行うことになります。
3、被解雇者選定の合理性
また、リストラの対象者の選定において、その合理性を明確にする必要もあります。
例えば、
- 勤務態度が悪い
- 不祥事を起こした
- 無断欠勤している
- 十分な成果を収めていない
- 賃金に相当する働きをしていない
等、選定に至った理由を明確にし、それを対象者にしっかりと説明します。
4、リストラの手続きの妥当性
リストラを行う際に最も重要となることは、その手続きの妥当性を確保することです。
具体的には、労働基準法第20条の内容に則り、労働者を解雇しようとするにあたっての上記の3つの内容も含め、少なくとも30日前までに解雇する旨を対象者に予告しなければなりません。
天災などやむを得ない事情が無い限り、これは絶対となります。
これを守らない場合には、30日分以上の賃金を支払うことになります。
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まとめ
経営不振が続き、人員の削減が必要であっても、法律で決められている手順や手続きは守らなければなりません。
これを怠ると、不当解雇で訴訟を起こされたり、思わぬ問題に発展したりすることも。
解雇に関する法律に則り、対象者とのトラブルが起きないよう、慎重に手続きを進めましょう。